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福祉・介護業界の倒産が過去最大!? あなたの事業所を倒産させないためには

長引くコロナ禍で、様々な業界がダメージを受けましたが、障がい福祉・老人介護業界も例外ではありませんでした。近年、過去最高を記録した障がい福祉・老人介護事業の倒産を詳しく分析し、これからの福祉事業所立ち上げに活かしていきましょう。

障がい福祉・老人介護業界の現状

倒産件数が増加?

新型コロナウイルスの影響が大きかった2020年から2021年には、様々な業界で倒産件数の増加が見られましたが、福祉・介護業界も例外ではありませんでした。老人介護業界では、介護保険法が施行された2000年以降で、過去最多の倒産件数だった2017年と2019年を上回り、その倒産件数は118件となりました。

一方、障がい者福祉事業での倒産件数は、介護業界より1年早い2019年にピークを迎えて30件、2020年には3割減の20件となりました。介護業界よりも事業所の母数が小さいので、安易な比較はできませんが、老人介護事業よりも障がい福祉事業の方が立ち直りが早かったようです。

いずれにせよ、厳しい状況であることに変わりはありません。では今後、障がい福祉事業で独立をしたいと思っている方や起業・開業を計画している方は、当面見送ったほうが懸命なのでしょうか?答えはNOです。

回復しつつある障がい福祉業界

2019年に倒産件数が過去最大になったとはいえ、倒産した事業所を利用していた利用者自体が減ったわけではありませんので、需要がなくなったわけではありません。まだ信頼できるデータは出揃っていないものの、未だコロナ禍であるはずの2021年には障がい福祉事業者の倒産が減ったとの報告もあります。これには、感染を恐れた利用控えが少しずつ解消されたことが挙げられます。もちろん、行政による各種の支援が一定の効果を挙げたとも言えるでしょう。

せっかく立ち上げた事業を倒産させないために

そもそもなぜ倒産したの? 

倒産するからには必ず理由があります。この記事を読んでくださっているあなたには、先人の失敗から学び、よりよい障がい福祉事業の起業をしていただきたいと思います。

過去最多であった2019年の障がい者福祉事業の倒産原因を読み解いてみましょう。2019年のデータですのでコロナの影響はありません。さて、倒産数30件のうち、半数以上の16件(53.3%)が販売不振で最多、続いて事業上の失敗が6件(20%)、運転資金の欠乏が4件(13.3%)となっています。ここではさらに、設備投資過大の1件(3.3%)にも注目してみます。

事業計画の甘さ

さて上記を合計すると27件で、倒産件数全体の90%となります。そして、これらは全て「事業計画の甘さ」に起因し、起業前の事業計画の段階で回避できたのでは?と思えるものが大半となります。

・販売不振

主に障がい者就労事業を営んでいる事業所と見られます。パン製造など、百貨店の催事などでも人気を集める事業所がある一方で、販売競争や受注作業の取り合いに苦戦し、収益難の事業所も多くあります。また、放課後等デイサービスのような通所型事業所であれば、「予定していた利用者数が集められなかった」と言い換えられます。利用者が少ない=利用料や利用者数に応じた給付金収入が少なく、収益難に陥るということですね。障がい福祉事業に限らず、どんな事業でも開業エリアの下調べは重要です。

・事業上の失敗

事業上の失敗の詳細内容は明かされてはいませんが、放漫経営に分類されています。放漫経営と呼ばれるものの実態は多岐にわたりますが、事業と関係が薄い(≒収益に繋がらない)分野にお金を使いすぎていたり、オーナーによる現場への無関心から従業員の離職を招き、事業に必要な法律上の人員配置が不可能になってしまった、などが予想されます。一部の悪質な事業所では、給付金の不正受給や、職員の無計画採用から大量解雇、あるいは職員への賃金未払いなどが散見されます。

・運転資金の欠乏

こちらの記事で、放課後等デイサービスの開業資金について、詳しく解説しましたが、放課後等デイサービスに限らず、障がい福祉事業の開業・立ち上げでは初期費用(イニシャルコスト)に加えて4ヶ月分の運転資金(ランニングコスト)、さらには当面の自分の生活費を確保しておくべきです。「運転資金の欠乏」による倒産は、この運転資金の準備が乏しかったか、開業費用の見立てが甘く、運転資金を開業費用に回してしまったと予想されます。立ち上げ数ヶ月で事業が軌道に乗り、資金繰りが上手くいくというのは、どんなビジネスにおいても難しいことであると、意識しておくべきです。

・設備投資過大

設備投資過大という理由から予想されるのは、家賃が高すぎる物件を契約したか、事業のための設備(内装、製造機械、車など高額のもの)に、お金をかけすぎたということです。障がい福祉事業に掛ける思いが強く、こだわりのある人ほど、自分の理想の施設、利用者の居心地の良い設備を追求しがちです。しかし、事業がビジネスとして成立し、倒産の心配なく長期に運営できなければ、最終的に利用者のためになりませんので、注意が必要です。しかし、導入設備は安ければ安いほどいいということはありません。安いものは性能もお値段なりですので、すぐ壊れる、カタログ通りの性能を発揮してくれない、見た目が悪く利用者の心象を損ねて客離れにつながる、などのリスクがあります。

倒産リスクだけを考えた起業の落とし穴

以上の倒産理由を考えると「起業前の事業計画を手堅く綿密に組む」ということの大切さを、おわかりいただけたかと思います。しかし「手堅く」始められればそれで良いのかというと、実際の障がい福祉事業では必ずしも良いとは言い切れません。

「手堅く」起業できる事業は、あなただけにとってのものではなく、ライバル、競合業者にとっても「手堅く」開業できる事業なのです。これをビジネス的には「参入障壁が低い」と言い、開業しやすい分、後発の周辺事業所との競争になりがちなビジネスモデルです。

重症心身障がい児(者)向け施設は選択肢としてアリ

その点、重症心身障がい児(者)向けの起業を考えるのは、良い選択と言えるでしょう。重症心身障がい児(者)向け施設は、専用の設備や専門的な対応が必要とされる分、新規開業が少なく、全国的に事業所の数が足りないため、利用者のニーズに追いついていません。

オールケア学院では、重症心身障がい児(者)向け事業所を運営してきたオールケア・グループのノウハウを活かした開業支援を行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

参考

東京商工リサーチ:2020年「障害者福祉事業」倒産と休廃業・解散調査

東京商工リサーチ:2020年「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散調査

東京商工リサーチ:2019年「障害者福祉事業」の倒産状況

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