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放課後等デイサービス事業所に選ぶ物件とは?必要な設備や法律を徹底解説

放課後等デイサービスを開業するには、どんな物件を事業所とすればよいでしょうか。この記事では、放課後等デイサービス事業所を立ち上げるにあたっての、法律や手法を解説していきます。

放課後等デイサービスの物件を選ぶ条件

まず、放課後等デイサービス事業所に使用する物件を選ぶ場合、いきなり物件探しをするのではなく、前提条件をしっかりと確認しましょう。施設選びの前提がブレると、後々の開業計画に大きく影響してしまいますので、物件の方向性はしっかりと決めておきたいところです。

その物件は、思い描いた事業所の方向性に合っている?

あなたが実現したい放課後等デイサービス事業所は、どんなコンセプトでしょうか。利用者には清潔で洗練された空間で過ごしてほしい。あるいは、ぬくもりを感じる場所で安心してほしい等、様々なイメージがあると思います。前者はビルの中の物件、後者は木造の物件でしょうか。重症心身障がい児を受け入れたい場合は、車いすに配慮した導線や段差の有無など、バリアフリーに配慮しなければなりませんね。

実際には、理想どおりの物件はなかなか見つからないものなので、ある程度の妥協は必要です。しかし、事業所を構える物件は、一度決めたら長期に渡って運営し、移転することはまず無いと思います。自分の動機づけのためにも、コンセプトや理想からかけ離れた物件は、おすすめできないと考えています。

考慮すべき法律・条例

放課後等デイサービス開業の物件に関わってくる法律や条例は4つあり、順に一つずつ解説していきます。

  • 児童福祉法
  • 建築基準法
  • 都市計画法
  • 福祉のまちづくり条例

放課後等デイサービスにおける児童福祉法

設備基準を満たしているか

放課後等デイサービス事業の開業には、2021年3月に改正された、児童福祉法で定められている『基準』を満たす必要があります。基準は、法人であること・設備に関する基準・人員に関する基準・運営に関する基準の4つがあります。本記事では設備について解説します。

放課後等デイサービスの設備基準

・指導訓練室

子ども達が過ごす部屋です。障がい児1名あたり、2.47㎡以上が必要ですが、地域によって多少異なり、3.0㎡以上のところもあります。火災、地震などの災害時に備え、出入り口の他に複数の避難経路を設置します。ほか、受け入れる子どもの特性に合わせ、機械器具等を揃えた物件であることも必要です。

・相談室

プライバシーに配慮し、相談の内容が漏れることが無いよう、遮蔽物などを設置します。

・トイレ、洗面台

感染症の予防に努め、衛生面に配慮し、手指消毒のため石鹸やアルコール消毒などを用意します。受け入れる障がいの種類にもよりますが、介助者や車いすが入れる程度の広さも必要となります。

・事務室

事業所の運営のための場所です。設備備品や職員を収容できる広さを確保します。

児童福祉法で定められた、設備以外の法人要件や人員に関する基準、運営に関する基準は過去記事をご覧ください。

【2021年改正】放課後等デイサービスを開業するための基準を解説

放課後等デイサービスにおける建築基準法

放課後等デイサービス事業所として使う物件の床面積が200㎡以上である場合、建築基準法により「用途変更の確認申請(用途変更手続き)」が必要です(2019年6月27日施行)。そのため、明確な目的がない限りは200㎡以下の床面積の物件で、放課後等デイサービスを開業することをおすすめします。

建築基準法に適合した物件であることの証明

200㎡以下の物件でも、建築基準法に適合した物件でなければなりません。法令に適合していることは「検査済証」と「確認済証」の写しの提出をもって証明します。

放課後等デイサービスにおける都市計画法

事業所に使用する物件の所在地は、都市計画法で定められた市街化区域でなければなりません。原則として、市街化調整区域といわれる地域では、放課後等デイサービスの事業を行うことはできません。許可を取れば可能な場合もありますが、わざわざ許可をとってまで放課後等デイサービス事業を開業するメリットのある物件ではありません。

自治体ごとの条例や、その他チェックすること

条例

放課後等デイサービスの物件選びに関わってくる条例としては、『福祉のまちづくり条例』や『バリアフリー条例』などがありますので、しっかりとチェックしておきましょう。

その他のチェック事項

・ハザードマップの確認

海辺の地域であれば「津波が来ないエリアかどうか」や、山がちな地形であれば「土砂災害の危険性がない地域かどうか」も重要です。近年ではこれらもチェックされる例も増えてきました。放課後等デイサービスの利用者の中には、特性上、突発的な避難への対応が困難な方もいらっしゃいます。利用者の安全、保護者への安心という面からも重要なポイントと言えるでしょう。

・耐震基準

1982年以降(正確には1981年6月以降)に建てられた物件は、新耐震基準という「地震の揺れに対して、建物が倒壊・崩壊せずに耐えることのできる性能」があります。これに対し、それ以前の建物・物件は旧耐震基準と呼ばれ、耐震性能が劣ります。

下記の資料は、阪神淡路大震災の木造物件の被害データです。旧耐震基準と新耐震基準戸で対比しています。旧耐震基準(S56以前)の物件では、93.9%に被害があり、中破〜倒壊が63.5%に上ります。対して、新耐震基準(S57以降)の物件の中破〜倒壊は23.1%に留まっています。放課後等デイサービス事業に選ぶ物件は必ず、1982年以降に建てられた新耐震基準の物件を選びましょう。

一般社団法人防災住宅研究所HPより

物件周辺の競合調査

条件に合う物件が見つかったら、周辺エリアの調査をしましょう。まずは、近隣に競合となる放課後等デイサービス事業所があるかどうかをチェックします。

調査方法

チェックの方法は色々とありますが、3種類ご紹介しましょう。

・Google Map

Google Mapで、物件の周辺地域を検索します。図は「守口市 放課後等デイサービス」で検索したものです。市内や区内だけではなく、物件の周辺地域もチェックをお忘れなく。

・LITALICO

・WAMNET

LITALICOやWAMNETといったサービスでも、障がい福祉サービス事業所を検索することができますので活用していきましょう。放課後等デイサービスの新規開業には、周辺に競合がいない物件を選ぶのが基本ですが、うまい具合に希望どおりの物件が見つかるとは限りません。

しかし、物件周辺に競合の事業所があるからといって、諦めてしまうのはちょっとお待ちを。よく調べてみると、そこに新規参入のチャンスがあるかもしれません。

開業のチャンスを見つける

まずは、インターネットや自治体の担当者からの聞き取りで、下記の情報を収集します。

  • 競合ホームページやブログ、口コミのチェック
  • 利用者の不満や困りごと
  • 物件エリアに利用者や保護者の会があれば参加

その上で、競合事業所の特徴や弱みを把握します。

  • 利用者の将来に向けた自立支援を行っているか
  • 過度な利用者の囲い込みを行い、利用者が自立して生活する機会を奪っていないか
  • 集客目的のイベントや、送迎サービスばかりを売りにしていないか
  • 預かりや学習塾的なサービス中心で、本質的な利用者支援を行っていないのではないか

利用者や保護者の不満やニーズが把握できたら、自分の過去の経験と照らし合わせ、事業所の強みとして出せる特色を考えていきます。仮に、既存の放課後等デイサービス事業所が、利用者や保護者にとって満足できるものではなかったとします。そうした場合、新しく放課後等デイサービス事業所ができるという情報は、利用者や保護者、地域の相談員にとって有益な情報であるため、必ずチェックしています。

近年では、安易な放課後等デイサービス開業から、質の低いサービス事業者が問題になってきています。もしかすると、「競合が多い」とあなたが諦めかけた物件のエリアに、放課後等デイサービスの開業チャンスが眠っているかもしれません。

参考リンク

建築震災調査委員会:平成7年 阪神・淡路大震災 中間報告

一般社団法人 防災住宅研究所:防災アレコレ9

LITALICO:施設情報

WAMNET:障害福祉サービス等情報検索

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